役員運転手の労働時間とは?断続的労働の適用について解説
役員運転手とは、企業の社長や取締役など役員専属のドライバーのことです。単なる運転手ではなく、企業の重要人物を安全かつ快適に目的地に送り届ける、非常に信頼性が求められる仕事です。タクシーやバスの運転手と異なり乗せる相手は一定で、運転ルートも比較的決まっています。この記事では、そんな役員運転の労働時間について解説します。
役員運転手の労働時間とは?
役員運転手は、運転技術だけでなく「人としての信頼性」が問われるプロフェッショナルな仕事です。安全第一、礼儀正しさ、そして何より見えない気配りが評価されるこの仕事は、一度信頼を得られれば長く安定して続けられる職業です。
そんな役員運転手の勤務体系は、タクシーやバスのドライバーと異なり、比較的柔軟かつ個別の事情に応じたものになります。一般的な労働時間は9時から午後6時頃、休憩1時間をはさんだ9時間です。
しかし、契約先や担当役員の勤務スケジュールによって大きく異なります。役員運転手の労働時間は、運転時間以外の待機時間も含まれます。始業時間は担当役員の朝の出社に合わせることが多く、7時~9時頃に出社するケースが一般的です。
また、日中の拘束時間は長くなりがちなことも特徴です。役員の外出予定によりますが、勤務時間として拘束されながら、運転以外の待機時間が多く発生します。
終業時刻も役員のスケジュールに合わせることになるので不規則なことが多く、会食や接待があると夜遅くなることもあり、20時~22時の帰宅も珍しくありません。基本は週5日勤務ですが、社長や役員の予定によっては休日出勤や急な対応を求められることもあります。
役員運転手における断続的労働とは?
断続的労働は労働基準監督署の認定をとることで、労働時間の一部が除外される制度です。認定されると、通常の法定労働時間(1日8時間・週40時間)とは別に扱われます。
断続的労働は、雇用側にとって「人件費が抑えられる」「不規則な労働に対応しやすくなる」といったメリットが多い制度です。そして労働側にとっても、労働密度が少ないため肉体的な負担が少ないことや、短時間の労働に全集中力を注げるというメリットがあります。
断続的労働が認定されるポイントは、実労働時間より待機時間が上回ること、実労働時間が8時間を上回らないこと、体や精神的な緊張が少ない業務であることです。役員運転手は、この断続的労働形態に該当するケースが多くあります。
たとえば、役員を午前中に送迎し、午後の予定まで数時間「車内などで待機」しているようなケースが断続的労働にあてはまります。役員運転手はタクシーや配送のようにひっきりなしに運転するわけではなく、運転に集中できる時間が限定されているのが特徴です。
集中力を持続しやすくなる一方で、断続的労働の認定を受けると、待機時間は労働時間としてカウントされない場合があります。そのため、残業代や休日手当といった割増料金が支払われないケースがあります。職場によっては、待機時間に仮眠・読書・スマホ操作・軽い作業などをすることが可能なこともあります。
しかし、緊急対応に備えて車内で待機する必要があるため、実質は仕事から完全に離れているわけではない状態です。ただ座っているだけでも精神的な拘束を強く感じる方にとっては、デメリットとなるでしょう。
役員運転手として働く上での注意点
役員運転手として働く際には、いくつかの注意点があります。
雇用形態
役員運転手の雇用形態は正社員・契約社員・派遣など多様で、福利厚生や給与の計算方法が異なる場合があります。とくにこの記事でとりあげた待機時間の扱いは重要で、待機時間が労働時間に含まれるかどうかで、給与や残業代に差が出ます。
「断続的労働」の扱いになっているか、契約内容や社内規定を事前にしっかり確認しましょう。待機時間中に洗車や職務上の実務がある場合は、労働時間としてカウントされるべきです。また、実労働時間と給与のバランスもチェックしておくと良いでしょう。
スケジュールの読みにくさ
スケジュールの読みにくさも、役員運転手として働くうえで知っておくべきことです。
役員運転手は突発的なスケジュール変更が多く、時間の管理が難しい傾向があります。定時で帰れるとは限らないため、私生活とのバランス調整が必要です。
秘密保持や礼儀も求められる
役員との距離が近く重要な会話を耳にする場面もあるため、秘密保持・礼儀・気配りも求められます。清潔感や言葉遣い、ドアの開け閉め、運転マナーなども重要です。
さらに、長時間の待機、夜間運転、突発対応などにも柔軟に応じられるよう、体調管理が欠かせません。これから役員運転手を目指す方は、まずは自身の運転スキルとマナーの見直しから始め、募集要項だけでなく、会社の風土や勤務条件をしっかり確認することが大切です。
まとめ
役員運転手はバスやタクシーの運転手と比べて、酔客やクレームなどのトラブルが起きにくく、運転ストレスが少ない職業といえます。走行距離や回数が少ないため、体への負担が少なく、一回の運転に集中できることが特徴です。適性があるのは、落ち着いた性格で誠実な人、一人での時間を苦にしない人、サービス精神があり人を支えることにやりがいを感じる人、安定した働きを求める人です。ただし、労働時間は担当する役員のスケジュールに合わせることとなるため早朝出勤・深夜帰宅など不規則になりやすく、拘束時間も長時間にわたります。断続的労働が適用されている場合、労働条件が大きく変わることがあるので、必ず確認しましょう。